助産師と看護師の違いとは

産婦人科に通院している妊婦さんから、病院で働いている看護師さんと助産師の区別がつかない、という意見があるかと思えば、出産を経験した女性からも、自分のお産に関わってくれたのが看護師か助産師なのかがわからなかった、という声が聞こえてくることがあります。看護師と助産師でユニホームを分けていない病院も多いので、これは当然のことなのかもしれません。
そもそも助産師の資格を得るには看護系大学で助産学を専攻するか、看護系の専門学校を卒業後に1年間の専門教育を受けた後に国家試験を受けなければなりません。近年は助産師としての高度な専門性を身につけるには大学院での教育が必要ではないかという意見が強くなり、いくつかの看護系大学では助産師を養成するための大学院教育が行われています。
国家試験に合格し助産師になった後は、内診と呼ばれる医療行為を行えるかどうかが看護師との違いになります。内診とはお産の進み具合を見定める診察のことです。厚生労働省の見解によると、医師と助産師以外は内診をしてはいけないということになっています。かつては、お産といえば大病院という風潮がありましたが、近年はクリニックでの出産件数が増加しています。妊婦さんがどこでお産をするにしても、一定の水準でケアを受けられるように内診の区分が明確になっているのです。そして正常なお産であれば出産直後に助産師が赤ちゃんを持ち上げる行為も認められています。産まれたばかりの赤ちゃんを持ち上げる瞬間が助産師という職業の醍醐味でもあるでしょう。

看護師が助産師になるとできること

産科での仕事に興味を持っている看護師にとって助産師の資格は高い価値があるものだと思うのはもっともなことです。ただ、助産師になると何ができるようになるかは正しく理解しておく必要があります。
助産師の国家資格によってできるようになることは、一義的には医師の指導によらない正常分娩の分娩介助です。分娩介助は看護師ではできないものなので、病院やクリニックで状況を自分で判断して分娩介助を行えるようになるのが大きな違いになります。ただ、助産師が分娩介助をする機会は減ってきているのが現状です。少子化の影響もありますが、病院でのプロトコルの作成が進み、医師が分娩介助をする仕組みが整えられてしまっている現場が多いのも理由です。そのため、助産師に職能として求められるものは分娩介助ではない場合がほとんどです。大学や専門学校などで教育を受けて、国家試験に合格することで培ってきた知識が重視されています。
近年、共働きの家庭が増え、晩婚のケースもよく見られるようになり、家族計画の悩みを持つ夫婦が増えてきました。また、子供に対する性教育や、成人に対する妊娠関連の教育指導も必要な時代になっています。助産師はその専門アドバイザーやカウンセラーとしての役割を果たせるのも特徴の1つです。助産師の資格を持っていることで一般の人から信頼を得やすいというメリットがあり、正しい知識を持っていることにより期待値も高いでしょう。これらのことを踏まえると、教育指導を担っていきたい看護師にとっても助産師になるメリットが大きいと言えます。